全国の一流料理人も使用する、外皮が薄く、果汁がたくさんの辺塚だいだい。ポン酢やお刺身にいかがですか。
産地直送収穫次第発送9月中旬~1月末予定
【海抜71m】本土最南端の秘境に宿る いにしへの辺塚だいだい
次の世代に引き継ぐことが、わたしの願い。
アラスカ生まれ、神奈川育ちの吉田さんがこの地に移り住んだのは、2010年代後半。本土の最南端である大隅半島に位置するこの集落は、鹿児島空港から約2時間強の場所。大学卒業後、幼少期から夢見ていた「海の近くに住みたい」という思いを叶えるために訪れたのが、辺塚地区と言われる限界集落だった。
移住後、近隣の農家さんからもらった柑橘の美味しさに心を奪われ、農業の道を志すことになる。さいわいこの地には、非常に希少な在来種の柑橘が自生していた。ちょうど高齢化により手放す予定であった40~50年もの樹々が育つ柑橘畑を引き継ぐことから、”自然農園よしだ”の屋号で農夫としての道がはじまった。

大隅半島のこの地に古くから自生する在来種 ”辺塚だいだい”
普段、わたしたちが目にする柑橘は、生産性やその食味を良くするために育種と言われる品種改良が行われる。また、接ぎ木と言われる手法で、台木となる樹には別の品種を使用する。それにより、耐病性を高める工夫をするのだ。ただその反面、在来種とは、そのような手を一切加わっていない状態で、昔からその地に宿る存在。長年の風土に適しているため、余計な手を入れる必要は全くないほど生育は良好である。自然なままの栽培に適していると言えるのだ。

集落には、おばあちゃんが2人だけ。
吉田さんの畑がある集落には、ご年配の方が2人だけ住んでいるという。周りは壮大な自然に囲まれた風景のため、深呼吸したくなるような解放感がある反面、不便な暮らしと隣り合わせなのはすぐわかった。病院、学校、商店街も何もないのだから。
「わたしが辺塚だいだいの畑を譲ってもらったように、他の方が移住された時に、わたしも同様のことをしたいと思っています。そのために、畑をもっと増やしたいと考えています。」
吉田さんの横顔からは、へき地での苦労よりも、無限の自由を得た喜びの方が大きいように感じた。

樹肌の美しさと躍動感に魅せられて。
彼の自慢の畑は、海が一望できる山上にあった。穏やかな海風に心が躍る日もあれば、自然の力強さを感じる暴風の時もあるだろう。そんな自然の喜怒哀楽の表情を受け止めながら成長する辺塚だいだいの樹は、とても美しい。柑橘は通常、年数に応じてその収穫量は異なる。年数が経れば、徐々に減少するのだ。それは、柑橘だけでなく他の果物も同様。
ただ吉田さんが寄り添う樹々は、驚くほどエネルギーに満ちているように感じた。収量も減ることなく、現在に至るというのだ。また、化学農薬、化学肥料、除草剤を使用していないだけでなく、驚くことに剪定などの作業も何も一切していないという。完全に、自然な栽培の極みといったところだろうか。それは、あきらかに自然と一体になっているのだった。この風景とともに生きる樹々たち。

「辺塚だいだいは、外皮が薄くて、果汁がたくさんです。」
そう言いながら、わたしの訪問に合わせて準備していた手土産用の袋から1つを取り出し、手渡してくれた。彼のさりげない丁寧な配慮を目にしたことで、きっと近隣の方から深い優しさで迎えられているのだろうと感じた。
確かに、温州みかんのように外皮が薄く、2つに割った中身からは瑞々しい果汁が溢れ出た。食味するには少々早い時期だったが、十分なまろやかさと酸味が印象的だった。だいだいという名であるが全く別物で、地域の方々は、香酸柑橘ということもあり、ポン酢や刺身などに利用するらしい。特に、全国の一流料理人がこぞって辺塚だいだいを使用する背景には、その素材を邪魔しないこれらの特徴が決め手になっていると感じた。



亜熱帯気候であるこの地区では、南国のよそおいが印象的な風景が広がっている。訪問当日は天候に恵まれたおかげで、波打ち際からどこまでも広がる水平線を眺望しながら、少しばかりロマンチックに異国の地へ思いを寄せる雰囲気になった。もちろん、自然は穏やかさの表情だけが、すべてではないことは分かっている。

そう言えば、”辺塚だいだい”は、地理的表示(GI)保護制度※(1)の対象となっている。地域を再評価するきっかけは、とても大切なことだと思う。わたしたちの暮らしの中で、目にしないものが各地域で息づく姿を知ることで、その支えになる可能性があるからだ。さん・らいふが大切にするthink global, act localの考え方とも非常に近い。

後日、吉田さんから一通のメールが届いた。
「長居をさせてしまったことで、中村さんの次の予定に支障が出たのではないかと心配していました」
彼の優しさは、きっとこの地域の存続を支える存在になると確信した。また、わたしたちも微力ながら彼の小さな応援団としてお手伝いしたいと思う今日この頃だ。

※(1)
その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。 ビジネスにおいては、その地域ならではの要因と結び付いた品質、製法、評判、ものがたりといった、産品の強みや魅力が見える化され、国による登録やGIマークと相まって、効果的・効率的なアピール、取引における説明や証明、需要者の信頼の獲得を容易にするツールになります。
ー農林水産省から抜粋ー
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/
旅の途中:鹿児島県肝属郡南大隅町佐多辺塚
写真/文 太郎社長(中村太郎)
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